整えられた書斎があって
明るい光と
春の風が吹き込んでいる
こどもたちは 外で思い思いに遊んでいる
いまだ 悩みという悩みももたず
ひだまりのような顔をして
・
ずっと自分が作っていた家族のおやつを
娘が作るようになった
時には
カチコチのビスケットや
おかしな味のするケーキもあって
懐かしいあの頃の 自分のおやつを思い出す
・
あの頃ぼくは 妻のためだけに作っていたけれど
娘は
父と母 兄と弟
みんなのために作ることができる
こんなにも 温かく見守られながら
・
みんなのために作っている
*
手を動かすということは その先に
人がいるということだ
笑ったり 泣いたりしながら
歩いている自分を
支えてくれる人がいるということだ
・
歩いて来てみてぼくは思う
手を動かすということは
その先で
誰かと 手を取り合う未来をつくるということだ
笑ったり 泣いたりしている
愛すべき人々と
語り合う言葉を もつということだ
・
整えられた書斎に
明るい光と
春の風が吹き込んでくる
その風の中で
こどもたちが 思い思いに
懐かしい未来を つむいでゆく
*
稲尾教彦 (詩)
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詩の朗読会を行うにあたって考えました。今回初めて稲尾さんことを知られた方もいらっしゃるでしょう。それで私が長々とご紹介するより詩をひとつ。稲尾さんの了解を得てありがたい事に空豆のホームページに載せることができました。この詩は何度となく読んでいて、あまりにも気に入っていて詩の書いている紙を空豆のバックヤードに貼っているほどなのです♪