「 懐かしい未来 」 

整えられた書斎があって

明るい光と

春の風が吹き込んでいる

こどもたちは 外で思い思いに遊んでいる

いまだ 悩みという悩みももたず

ひだまりのような顔をして

ずっと自分が作っていた家族のおやつを

娘が作るようになった

時には

カチコチのビスケットや

おかしな味のするケーキもあって

懐かしいあの頃の 自分のおやつを思い出す

あの頃ぼくは 妻のためだけに作っていたけれど

娘は

父と母 兄と弟

みんなのために作ることができる

こんなにも 温かく見守られながら

みんなのために作っている

手を動かすということは その先に

人がいるということだ

笑ったり 泣いたりしながら

歩いている自分を

支えてくれる人がいるということだ

歩いて来てみてぼくは思う

手を動かすということは

その先で

誰かと 手を取り合う未来をつくるということだ

笑ったり 泣いたりしている

愛すべき人々と

語り合う言葉を もつということだ

整えられた書斎に

明るい光と

春の風が吹き込んでくる

その風の中で

こどもたちが 思い思いに

懐かしい未来を つむいでゆく

稲尾教彦 (詩)

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詩の朗読会を行うにあたって考えました。今回初めて稲尾さんことを知られた方もいらっしゃるでしょう。それで私が長々とご紹介するより詩をひとつ。稲尾さんの了解を得てありがたい事に空豆のホームページに載せることができました。この詩は何度となく読んでいて、あまりにも気に入っていて詩の書いている紙を空豆のバックヤードに貼っているほどなのです♪